日本産業衛生学会 中国地方会
地方会ニュース 第45号(令和7年7月)
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就業者の健康管理に関する一考

鳥取産業保健総合支援センター 相談員
村田 勝敬
 本年4月初旬、日本産業衛生学会中国地方会の役員・代議員でもない古希を過ぎた老人に、鳥取県担当としてニュースレターのトップページに何か書くようメールが届きました。依頼者は東北地方会でお世話になっておりました神田秀幸先生(現、中国地方会会長)でした。固辞するにも恐れ多く、やむなく筆を執ることにしました。
 最近の就業者の健康問題は過重労働や各種ハラスメントによるメンタル不調(≅うつ病)や職場に馴染めないことによる適応障害が主要なテーマになっているようですが、私が医学部を卒業した頃は環境有害因子による健康問題でした。このためか、教授から賜りました研究テーマは「産業保健領域における有害因子による神経影響の解明」でした。末梢神経伝導速度を皮切りに、短潜時体性感覚誘発電位、視覚誘発電位、聴性脳幹誘発電位、P300、心電図 RR 間隔変動解析の測定法を5年かけて確立し、鉛作業者、振動工具作業者、各種有機溶剤作業者、VDT 作業者、交代制勤務者(この他、胎児性水俣病患者、サリン被害者、アルコール依存症患者)を対象集団とした神経生理学的研究を行ってきました。この間に、生命保険会社や保健事業団の嘱託医のほか、万年筆製造工場、製缶工場、市役所などの産業医を経験しました。
 大学病院の臨床癌化学療法部門と血液内科に勤務していた二人の学友が 30歳前後で各々胃癌と 肺癌で黄泉の国に逝きました。産業保健に40年以上携わってきましたが、彼らの死は抗癌剤に発癌性があるという認識がわが国に殆どない時代に起こった悲劇であると悟るまでに約20年を要しました。それ以後、「有害化学物質であっても、含有率が低いないし少量であれば問題ない」と考え、有害因子として認知しない姿勢は危険極まりないと考えるようになりました。
 産業保健の基本的な考え方の一つに「労働衛生の3管理」があり、一に作業環境管理、二に作業管理、三に健康管理が掲げられています。もちろん作業環境管理(作業環境の改善)が最優先事項であり、その方策は有害因子の①認知、②測定と評価、③抑制です。特に、有形無形の有害因子の存在を、事業所の当該部署の人だけでなく、従業員全員で共有し、その後で防止策(リスク低減化)を講ずることが肝要です。一方の健康管理においては、メンタルヘルス対策も重要ですが、生活習慣などの改善にも、是非、注力していただきたいです。
 また、業務上疾病は何の変哲もない事務所ですら発生していますので、職場巡視は事業所における作業環境管理と作業管理を行う上での貴重な情報源となります。斯くなる執心もあり、労働衛生指導医の経験を「鳥取県医師会報」(https://www.tottori.med.or.jp/kaihou)のフリーエッセイ欄に「職場巡視(1)~(36)」(2023年4月号~ 2026年3月号)として掲載しています。
 東北地方に赴任して間もない頃、県内の事業所の定期健康診断(健診)結果報告書を見ると、高血圧だけでなく、肝機能異常や脂質代謝異常の有所見率が全国平均値より格段に高く、「理由は何か?」をいつも心に留めていました。そんなある日、自動車販売健康保険組合の有所見者再診の折に食事について尋ねると、カップ麺を昼食時に食べていると返答する人が多い印象を持ちました。これを契機に、男性組合員約 2,000名に食生活習慣の調査を行い、その後に実施された定期健診の個人票データと連結し、健診データに及ぼすカップ麺摂食の影響を検討しました。
 年齢、睡眠時間、肥満度、喫煙、飲酒、運動に配慮しながら、ALT、AST、γ -GTP に及ぼす昼 食時カップ麺の摂食習慣の影響を解析すると、カップ麺を殆ど食べない人に比べ、カップ麺を週1~2個摂食する人の ALT 高値(≥ 30 IU/ℓ)のリスク比は 1.33(95% 信頼区間 1.01 ~ 1.75)であり、週3個以上では 1.42(同、1.07 ~ 2.01)とさらに高くなりました。この予防レベル値である肝酵素のカットオフ値を超えると、将来、脂肪肝に直結することが専門誌で示唆されています。また、高中性脂肪血症(≥ 150 mg/dℓ)と低 HDL コレステロール血症(<40 mg/dℓ)についても、カップ麺摂食者のリスク比は有意に高いことが示されました(各々1.67 と 2.13)。一方、カップ麺は食塩を 5g以上含むものが多いことから、その多食は塩分摂取過多をもたらします。
 東北地方の愛飲家の酒量は半端でなく、当時、25度焼酎2ℓボトルを週に2~3本空ける人もい ました。前述の組合員を対象としてアルコール摂取の影響を調べると、少量で肝機能に影響が現れるのはγ -GTP であり、次いで AST でした。また、高 LDL コレステロール血症(≥ 140 mg/dℓ) や低 HDL コレステロール血症における 100% エタノール換算 40g / 日以上の飲酒者のリスク比は、非飲酒者と比べ、0.40 ~ 0.64 と有意に低かったのですが、同飲酒者の高中性脂肪血症のリスク比は1.61(95% 信頼区間 1.07 ~ 2.42)と高くなっていました。加えて、飲酒量の増加は血圧値を直線的に高くし、かつ高血圧症(≥ 140/90 mmHg)におけるエタノール 60g / 日以上の飲酒者のリスク比は 2.88(同、1.38 ~ 6.01)と突出していました。  定期健診の個人票を見ると、就業者の食生活を垣間見ることができます。すなわち、ALT 高値、 中性脂肪高値、HDL コレステロール低値が揃う人はカップ麺を多食していることが多いと想像され ます。一方、HDL / LDL コレステロール値は正常範囲内にあるが、γ -GTP(AST)および中性脂肪の高値が目立つ場合は多飲者である可能性が高いようです(尤も、加療中の人は薬によって検査値が変わり、判別不能となることがあります)。産業医の役割は「就業者が健康で快適に働けるよう専門的立場から指導助言すること」となっております。多くの有害化学物質は肝臓に悪影響を及ぼすことが知られていますので、今回のような食習慣に関連する交絡因子にも注意しながら毒性評価することが求められます。  余談です。私が産業保健に片足入れた頃、産業医を標榜している大分の先生から「飲酒者の額がテカテカであれば日本酒党、ザラザラであれば焼酎党」と教えられました。そこで飲酒者の額をマジ観察していたのですが、テカテカ(酒焼け)の場合に的中率が高かったことを覚えています。近年は飲酒の仕方が多様化しており、額を見ても日本酒、焼酎、ビール、洋酒党なのか判別できなくなりました。 一方のカップ麺の話ですが、2014年の総務省の家計調査から見た都道府県別インスタントラーメン消費量ランキングは「1位が青森県、2位は鳥取県、3位は山形県」であったことから、案外、鳥取でも上述の研究成果が罷り通るのかもしれません。
第35回産業衛生学会全国協議会のご案内

企画運営委員長
徳島産業保健総合支援センター 所長/
日亜化学工業(株)産業医
斎藤  恵
このたび、第35回日本産業衛生学会全国協議会を令和7年(2025年)11月27日(木)・28日(金)・29日(土) の 3日間、あわぎんホール、シビックセンター(徳島市)を会場に開催することとなりました。あらためて、このような機会を与えてくださった方々に心より感謝申し上げます。徳島は初めてという方もたくさんいらっしゃるのではないかと思いますが、精いっぱいおもてなしをさせていただけるよう、四国地方会一丸となりまして、準備を進めておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
 今回第35回日本産業衛生学会全国協議会のテーマは、「すべての労働者が元気に働ける産業保健をめざして」にいたしました。女性労働者や外国人労働者の進出、定年延長による高齢労働者の活躍、障害や病気を持ちながら就労継続する労働者、現代の産業現場は多様性に溢れています。
 すべての労働者がそれぞれの置かれた立場で、最大限に持てる能力を活かし、いきいき元気に働けるために、私たちは何を目指すべきか。これは私たち産業保健に関わるものにとって永遠のテーマであると思います。産業保健職1人1人が、このテーマに対して役割を果たしていくことが、両立支援にもつながっていくと考えます。活発な意見交換や議論を行う場が提供できたら幸いです。
 四国三郎の吉野川、さだまさしの映画の舞台ともなりました眉山、徳島は、海、山、川に囲まれた自然豊かな県です。そして徳島といえばなんといっても阿波踊りです。学会のポスターにも阿波踊りのイラストを用いました。8月の阿波踊り期間には県内各地が「ぞめき」に包まれます。皆様にも、ぜひ会期中に阿波踊りを体験していただきたいと思います。懇親会でもご一緒に踊りましょう!
 また、鳴門金時、阿波尾鶏、鳴門わかめ、徳島ラーメン、フィッシュカツ、竹ちくわ等の徳島ならではの美味しい食材や名物も楽しんでいただきたいです。もちろん徳島の美味しいお酒もたくさんご用意いたします。
 実地研修では、徳島を代表する大塚製薬、西精工、松浦酒造、日亜化学工業の4社にご協力いただき、実際に現場を見せていただく予定ですので、ぜひご参加ください。
 会場であるあわぎんホール、シビックセンターはいずれも徳島駅から徒歩10分足らずで行けますし、ホテルも徳島駅近くに集中しておりますので、とても便利です。
 一人でも多くの皆さんの参加を歓迎するとともに、よりよい研鑽の場にしていただけますよう、企画運営委員一同、準備の仕上げに取り組んでまいりますので、1人でも多くの皆様が徳島へお越しくださるのを、心よりお待ちしております。皆様方の益々のご健勝とご多幸を祈念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます。
第69回中国四国合同産業衛生学会(徳島)のご案内



徳島大学大学院医歯薬学研究部 
公衆衛生学分野教授
森岡 久尚
 第69回中国四国合同産業衛生学会につきまして、令和7 年11月29日(土)に、徳島県徳島市のあわぎんホール(徳島県郷土文化会館)で開催することとなりました。中国地方会の会員の皆様におかれましては、ご承知のことと思いますが、同年11月27日(木)から11月29日(土)まで、同ホールにて、第35回日本産業衛生学会全国協議会(企画運営委員長:斎藤恵徳島県産業保健総合支援センター所長)が開催されます。そのため、全国協議会の期間中に同じ会場を利用して本学会を開催することとなりました。
 本学会のテーマは、「メンタルヘルスケアの充実に向けて」とさせていただきました。特別講演では、中国四国地方に縁があり、東邦大学医療センター佐倉病院産業精神保健・職場復帰支援センターにおいて、働く方々の職場復帰支援に取り組まれている小山文彦センター長(教授)に講師をお願いしています。
 令和4 年に実施された厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」では、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている働く方々の割合は、82.2% であったと報告されています。また、精神障害による労災支給決定件数は、令和5年度まで5年連続で過去最高を記録しています。産業保健の最前線でご活躍中の会員の皆様には言うまでもありませんが、働く方々の精神的な面を含めての良好な勤務環境づくり、高ストレス者への対応、休職中の方の職場復帰など多くの取組みがより一層求められるようになっています。このような背景と、「すべての労働者が元気に働ける産業保健を目指して」という全国協議会のテーマも踏まえ、本学会のテーマを決定させていただきました。
 先にも述べましたが、本学会は全国協議会と同じ期間内に開催しますので、効率的な運営が求められていると認識しております。今後、プログラムの詳細をお知らせさせていただきますが、至らない点などあるかもしれません。会員の皆様にはご理解を賜りたく存じます。
 最後になりましたが、一般演題の申し込みを含め多くの会員の皆様の本学会へのご参加をお待ちしています。何卒、よろしくお願い申し上げます。
第98回日本産業衛生学会(仙台)ご報告



企画運営委員長
黒澤  一
東北大学環境・安全推進センター 教授・統括産業医
 第98回日本産業衛生学会の開催は、東北地方会がお引き受けし、去る5月14 ~ 17日に仙台で開催、無事に終了することができました。多くの皆様のご参加と活発な議論と交流で、大変賑やかな学会となりました。中国地方会をはじめとする参加者の皆様および関係各位に深く感謝し御礼を申し上げる次第です。実を申しますと、本学会をお引き受けした当初、頼みの学会場、仙台国際センターが半分使えないことが判明し、一度は仙台での開催をあきらめました。全体の収容能力の半分以上をもつ会議棟が改装工事のために使えず、残る展示棟だけでは収容に限りがあるからです。ですが、結局、仙台市側の強いご支援もあって、市の施設の仙台緑彩館、仙台市博物館、および東北大学の施設である萩ホールを使わせていただく目途がたち、なんとか開催にこぎつけた次第でした。分散会場になってしまいましたし、会場によっては部屋が狭く多くの入室希望者があふれてしまったことなど、大変なご迷惑とご不便をおかけしてしまいました。しかしながら、そのような中、すべての会場、機器展示場およびポスター会場に参加者が集い、周辺の自然の環境を楽しみながら移動くださっている様子が伝わってきて、本当に助けられた思いでした。プログラム面では、公募で多くのシンポジウムの申し込みが集まりました。その他、プログラム委員会を中心に、メインシンポジウムを3つ企画しました。
最先端のテクノロジーを東北大学の研究者に紹介してもらう企画、ゲノム情報などによる個別化ヘルスケアと産業保健の企画、大災害についての企画、でした。どれもパネリストおよび座長の皆さんのおかげで、充実した内容にすることができました。後からオンデマンドで聴講された方もいらっしゃったのではないでしょうか。その他、日本医師会の松本会長をお迎えしての特別講演、100周年特別企画、市民公開企画等のプログラムを組ませていただきました。杜の都仙台の自然の他、学会後の夜のひとときも魅力の一つだったと思います。最終日が仙台の青葉まつりと重なる関係上、全体懇親会は木曜日に開催させていただきました。参加者500人を超える盛大な会となり、ユネスコ世界遺産となった西馬音内盆踊りや学会有志によるジャズ演奏などをお楽しみいただきました。牛タンや寿司などの仙台の味のほか、東北の日本酒もたくさんご賞味いただけたかと思います。次回の第99回は大阪、記念すべき第100回は九州です。なんとか、無事にバトンを渡すことができたかはこころもとありませんが、ほっとする気持ちでいっぱいです。重ねて皆様のご支援ご協力に感謝を申し上げる次第です。
第36回 日本産業衛生学会全国協議会(倉敷大会)開催に向けてのご案内とお願い

大会テーマ:
「ここから始まった感謝の旅路 ─ 想いを胸に皆で集いあう」
伊藤 達男
川崎医科大学 衛生学
中国地方会の皆さまへ

 令和8年度(2026年度)の第36回日本産業衛生学会全国協議会を、11月5日(木)から7日(土) の期間で倉敷の地にて開催させていただく運びとなりました。産業衛生の歴史に深くゆかりのあるこの場所で、全国の仲間をお迎えできる機会をいただけましたことに、身の引き締まる思いとともに、心より感謝申し上げます。

 本大会では、「ここから始まった感謝の旅路 ─ 想いを胸に皆で集いあう」というテーマを掲げました。これは、産業衛生の原点のひとつである倉敷にあらためて立ち返り、私たちが先人たちから受け継いできた想いを、未来へつなぐ場としたいという願いを込めたものです。

 約一世紀前、倉敷労働科学研究所において、産業衛生の全国的制度化を求める声が上がり、昭和14年には「産業衛生協議会 創立総会」が正式に開催されました。倉敷という地は、まさにその制度の出発点であり、今大会が久方ぶりにこの地に戻ってくるという事実には、深い感慨を禁じ得ません。

 私はこれまで産業衛生学会において十分な実績を積んでまいったとは言えず、大会長としてまだまだ力不足を感じております。そのため、本大会の開催にあたっては、中国地方会長・神田先生のご指導のもと、地元4部会(産業医部会・産業保健看護部会・産業衛生技術部会・産業歯科保健部会)の皆さまにお力をお借りしながら、誠実に、そして丁寧に準備を進めてまいりたいと考えております。

 中国地方会のお一人おひとりの関わりが、この大会を温かく、記憶に残るものにしてくださると信じております。
 「倉敷で開催されて本当によかった」と、全国からお越しいただく皆さまに感じていただけるような大会となるよう、引き続きご指導ご協力を賜れますよう、心よりお願い申し上げます。

 感謝の気持ちを込めて。
理事会報告
理事会報告
(2024年度第4回、2025年度第1回、臨時理事会)

三菱ケミカルグループ株式会社
真鍋 憲幸
2024年度第4回及び2025年度第1回の理事会、臨時理事会のご報告をさせて頂きます。
■2024年度第4回理事会(2025/1/13 開催)
<主な審議、協議、報告事項>
(審議事項)

1.2025年度事業計画、予算案について承認された。
2.奨励賞選考細則の改定について
歴史的資料の収集、整理、電子媒体での保管
テーマ:「次世代が残したい産業衛生学の百年」
3.部会に関する規定の改定について(抜粋)
部会は幹事会を組織し、幹事会を部会の意思決定機関とする。
幹事の選任についての変更
・部会長からの推薦により地方会長が推薦し、理事会承認を経て理事長から委嘱。
・ 各地方会から2 名以上、あらかじめ部会で定めた各地方会の所属部会員数に相応した人数とし、総数は最大30 名とする。
・幹事の要件:代議員または学会所属5 年以上の正会員で代議員としての被選挙権を有する者。
部会長は特命事項担当として幹事の要件を満たすものから若干名のオブザーバーを選任し幹事会に出席させることができる。
4.研究会の継続、解散について
・解散      :第一次産業労働安全衛生研究会
・継続審査で不可 :産業保健情報・政策研究会、雇用と就業多様化研究会
(協議・報告事項)
1. 第98回日本産業衛生学会準備状況報告
2. 第37回(2027年)全国協議会の担当は東北地方会(予定開催地としては青森)
3. 学会・全国協議会開催マニュアルについて
・ 開催地選定基準変更、ダイバーシティへの配慮、会場費高騰への費用負担対応、関東地方会5年に1回担当とする輪番制の変更等。
4. 会員の状況(2024年12月26日時点)
正会員:9322、産業医部会:1868(前年同期比126 増)、産業保健看護部会:1790(41 増)、産業歯科保健部会:323(11 増)、産業衛生技術部会507(52 増)
2025年度第1回理事会(2025/4/5 開催)
<主な審議、協議、報告事項>
(審議事項)

1.定款変更について
学会誌(日本語)の紙媒体の廃止に伴う定款の変更は不要とす。(HPにPDF化し掲載)
2.2025 年度総会開催について
・審議事項: 2024年度決算報告案、名誉会員推薦、役員選任、許容濃度等に関する提案、倫理綱領の改定
・報告事項: 機関誌発行、2024年度事業報告、2025年度事業計画、2025 年度予算、今後の学会準備状況など
3.2024 年度事業報告案について
I. 学術集会、講演会、研修会の開催、II. 学会誌、学術図書の刊行及び産業衛生に関する資料の収集、編さん、III. 許容濃度等、産業衛生に係わる各種基準等の勧告、IV, 産業衛生専門職の研修教育、 資格認定など
4. 2024 年度決算報告案ついて
5. その他:委員会委員追加、研究会解散、新入会員、臨時理事会開催など
(協議・報告事項)
1.学会全国協議会開催マニュアルについて
・MAMIS(医師会会員情報システム)にて、認定医単位管理
2.第98回日本産業衛生学会準備状況報告(2025/5/14-17 仙台国際センター等)
・現地開催とオンデマンド配信、4会場を2台の巡回バスで移動支援
3.第99回日本産業衛生学会準備状況報告(2026/5/27-30 グランキューブ大阪)
  5/31 特別研修会(産業医研修会)を実施予定
4.第100回日本産業衛生学会準備状況報告(2027/5/26-29 北九州国際会議場)
5.第101回日本産業衛生学会準備状況報告(関東地方会、パシフィコ横浜)
6.第34回全国協議会会計報告(参加1830名)
7.第35回全国協議会準備状況報告(2025/11/27-29 あわぎんホール(徳島))
8.第36回全国協議会準備状況報告(2026/11/5-7 倉敷市民会館など)
9.第38回全国協議会の担当地方会について:近畿地方会
  ※第37回は東北地方会で確定済
10.専門医制度委員会
第33回産業衛生専門医資格認定試験(案):2025/8/30(土)~ 31(日)、パナソニックリゾート大阪(予定)、受付期間:5/1 ~ 6/2、委員会承認:6月下旬~ 7月上旬
11.中央選挙管理委員会報告:監事候補者:川上憲人先生、森 晃爾先生
12.会員の状況(2025/3/24 現在、正会員9086人)
2025 年度臨時理事会(2025/5/14 開催)
場 所:仙台国際センター展示棟 会議室3
<審議事項>

1.理事長の選出
理事長への立候補者は武林 亨理事1名であったことを確認した。
武林 亨理事はこれまでの重点活動事項を引き継いだうえで、学会設立100年に向けて着実に歩み、持続可能な成長の場としての学会を運営し、更なる発展を図ると所信表明した。
信任を協議し、新理事長は武林 亨理事に決定した。
2.業務執行理事の選出:武林理事長
武林理事長より、業務執行理事候補者が推薦され、本人の同意を得た。
・副理事長  :堤 明純
・総務担当理事:野見山哲生、森口次郎
・経理担当理事:東川麻子、真鍋憲幸

候補者の信任を協議した結果、全員が信任され、業務執行理事が決定した。
また、100周年を見据えたミッションの推進や、地方会や部会運営の支援強化のため、業務執行理 事を補佐する役割の理事をおくことが提案された。候補者として須賀万智理事、千葉敦子理事が推薦され、承認された。
<報告事項>
1.EXPO2025 でのイベントについて
GISHW(Global Initiative for Safety, Health & Well-being)にて、2025年7月17日に開催する国際シンポジウムが紹介された。プログラムは、第一部「日本における産業保健の軌跡(1929 ~2025年)」、第二部「日本における産業保健の未来」で構成され、学会員は割引価格が適用される。
各県報告 広島県報告


マツダ株式会社 安全健康防災推進部
山下 潤
 令和7 年6 月1 日から施行される労働安全衛生規則の改正により、「報告体制の整備」「実施手順の作成」「労働者への周知」などの措置が事業者に義務付けられました。罰則も設定されているため、普段関わっている会社でも改正に伴う対応、特に熱中症の疑いがある症例が発生した際の対応について相談を受けることも多く、注目度の高さがうかがえます。今回は、マツダ㈱において熱中症の疑いがある事例が発生した際の手引きとして周知している熱中症措置フローと、今回の改正に伴って行った変更点について紹介します。
 私がマツダ㈱に入社した平成22 年は、平成21 年に作成された「職場における熱中症予防対策マニュアル」を基に熱中症対策を推し進めている最中でしたが、ご存じのように全国的に記録的な暑さで多くの熱中症患者が発生した年でもありました。マツダ㈱においても、夏季の作業中に不調を感じた作業者のうち20 名が熱中症と診断され、その中にはⅡ度以上に分類される比較的重症な熱中症も含まれていました。また、熱中症の症状を確認しながら作業を続けさせる、就業後に症状の申告があった後に作業者を一人にするなど、管理者の対応として改善を必要とする例も見受けられていました。これには、ライン作業という作業形態そのものの性質、すなわち、一度不調者が出ると本来作業者に最も近い位置で作業者の体調を把握し対応すべき管理者自体が、ライン作業の臨時サポート要員の調整や、場合によっては補充要因として拘束されがちであるという構造的な問題が関与している側面もありました。
 このような背景の中、前記した就業上の制約のある職場もある中で、熱中症を早期に発見し、重篤化させないためには、熱中症の初期対応の重要性を周知するだけでなく、管理者が熱中症の疑いがある労働者の症状や行うべき対応をよりイメージしやすい熱中症措置フローを作成する必要があると考えられました。具体的には、熱中症措置フローに熱中症の重症度についての記載を行い、Ⅱ度以上の症状が認められる場合は原則受診を促すための手順等を加えることとしました。
 ただ、職域の管理者に医学的な専門知識を必要とする判断を求めると、逆に混乱を招く懸念もあったため、現場教育において①熱中症の重症度分類とその症状について、②「倦怠感」「虚脱感」「意識清明ではない状態」などの語感から状態を理解しづらい症状の説明、③業務に復帰させる場合や受診させた場合のその後のフォローについて、④疑わしい場合には受診を選択することの周知など、判断する上で迷いやすい部分には特に時間をかけて説明を行うようにしました。ただ、こちらの心配をよそに、この熱中症措置フローは、近年の熱中症発生状況から対応に問題意識を持っていた現場にスムーズに受け入れられ、結果として、管理者に負担をかけつつも早期発見・対策に向けて踏み込んだ対策を行えるようになったと言えました。
 ただ、当然ながら、この取組だけで熱中症対応の問題が完全に解決するわけではありません。昨年のマツダ㈱の熱中症発生状況を見ると、重篤なケースはなく一定の効果は見られましたが、発生件数自体は7件認められました。特に、帰宅後に症状が悪化したケースも報告されており、現場での症状発生時の対応の難しさがうかがえます。引き続き、現場で体調不良を訴えた社員の帰宅後フォローの再徹底の必要性が認識されました。また、当日の朝の体調チェックシートを確認すると、本人が体調不良を自覚していたケースも散見され、既存のツールの使用を再徹底し、社員自身へ報告の重要性を再周知する必要があることも合わせて確認されました。こういった背景もあり、今回の労働安全衛生規則の改正に合わせて、熱中症措置フローの見直し(図1)を行いました。熱中症対応の流れについては大きな変化はないものの、社員自身が体調不良を自覚した場合や体調不良者を発見した場合に行うべきこと、管理者が報告を受けた際に行うべき対応について明記し、職域で熱中症発生時の対応を再確認する機会としてもらう予定です。
 もちろんあくまで熱中症措置フローは万が一の状況に対する備えであり、熱中症の数を減らすための労働衛生の3管理に基づいた施策は別途行うことが必要であることは言うまでもありません。マツダ㈱では、教育的アプローチだけでなく、社内で行っている職場の熱中症リスク評価に基づいた継続的な設備投資から、昨今増えてきた様々な熱中症対策グッズの導入まで、様々な対策を行ってきましたが、今年からは、これらに加えて「屋外作業における熱中症対策の社内指針」の設定や、「熱中症警戒アラートを利用した熱中症リスクの高い日の意識づけ」など、ハイリスクな作業・タイミングを意識しやすくする取組を導入するなど、現場の熱中症対策をサポートする新たな施策を進めていく予定です。
 近年の平均気温の上昇傾向に伴い、職域で起こる熱中症の予防はより難しくなってきています。ただ、今回の労働安全衛生規則の改正が目指しているように早期発見・早期対応を行うことで、熱中症の重篤化は防ぐことが可能であり、そのためには、社員に対する知識の普及と環境改善の両面から対策を継続することが重要と考えます。今後も環境が悪化する可能性を念頭に置きつつ、熱中症の重篤例の発生をゼロにするための支援を続けていきたいと思います。
各県報告 岡山県報告
岡山県代表幹事
高尾 総司
 何を書こうかと思案しているうちに締め切りを過ぎてしまいました。やはり、岡山県の会員間の活 動というものをなにか具体的に行っているわけではないこともあり、来年の報告に向けては、まずはなにか報告できる活動を行うことを目標にしたいと思います。
 さて、今回は、先日実施した産業医研修会のご報告をもって、岡山県報告に代えたいと思います。 先日の研修会は、更新、実地、専門をバランス良く組み込んだ6単位の研修会でした90名ほどの先生方の参加のもと、実地ではグループワークにも熱心に取り組んでいただきました。  報告できる具体的内容はまだ何もないのですが、私たちとしてもMAMISに研修受講歴を登録する初めての研修会となりました。単位シールを配布しないことについては、思ったほどの混乱はなく、たいていの先生におかれましては、とりあえずマイページの登録はしていただいているようでした。
ここで共有に値するような質問等もとくにありませんでした。
 あとは、最近の研修会で採用しているスタイルについて2 点ほど共有したいと思います。ひとつは、slido(https://www.slido.com/jp)というオンライン上の質問サイトを活用して、受講者からの質問に回答をしながら研修を進めています。匿名で質問ができますので、昼休みなどを活用して、ぼちぼちと質問も出していただけますので、双方向的な研修の実施にはまずまず有用だと感じています。もうひとつは、複数講師での「かけあい」的なコマの設定です。具体的には、昨年実施した地方会でも登壇いただいた、前園弁護士、森社労士と三人で、特に実地研修としてのグループワークなどに際しては、グループで検討してもらったテーマに対する講評的コメントは、3 人からそれぞれ立場の異なるコメントを行うことで、受講者にとっても飽きずに聞きやすかったのではないかと思っています。
いま現時点では、まだせいぜい、誰かが講義をして、その講義内容に対する質問やコメントのような形で、他の演者が関与するという程度の形ですが、より研修効果があがるような文字通りの「かけあい式」の実施についても、もっと突き詰めていきたいと考えています。
各県報告 山口県報告

山口県産業医会 幹事
前野 孝明
  2025年1月26日、山口県山口市の山口県総合保健会館にて、「第75回山口県産業衛生学会」を開催いたしました。
 本学会では、「化学物質等への健康障害対策のあり方の変遷から考えるリスクマネジメントの未来~作業環境管理・作業管理・健康管理の再構築を模索する~」をテーマに、3つの講演とパネルディスカッションを行いました。県内の専属・嘱託産業医、産業看護職、衛生管理者など計130名の多職種の方々にご参加いただきました。実務に活かせる学びや意見交換の機会となり、たいへん有意義な会となりました。
■ 基調講演:
「全てはここから~ SDSの理解と活用~」
- 自律的管理の時代を担う産業保健専門職に必要な視点とは-
(上野 晋 先生/産業医科大学 産業生態科学研究所
 職業性中毒学研究室 教授)
 上野先生からは、SDS(安全データシート)の読み方と活用方法についてご講義いただきました。危険有害性の分類やばく露限界値、応急処置の情報など、SDSに記載されている内容をどのように実務に活かすかについて、毒性学の視点も交えて具体的に解説いただきました。
 SDSは、産業医・衛生管理者・現場の従業員が共通して理解しやすい情報源であり、化学物質の 自律的管理に向けた第一歩となるものです。今回の講演を通して、SDSの正しい理解が、事業所に 対する産業医の助言にもつながることを多くの参加者が再確認しました。  
■ 特別講演:「労働衛生行政の動向について」
(梅本 賢治 課長/山口労働局 労働基準部 健康安全課)  梅本課長からは、労働衛生行政の最近の動きについて、制度改正の背景やポイントを含めて説明がありました。特に、化学物質の自律的管理への移行や第3項・第4項健康診断の導入、がん原性物質に関する記録保存義務など、産業現場に影響の大きい改正点が詳しく紹介されました。
 また、メンタルヘルス対策や一人親方への安全衛生支援の現状にも触れていただき、幅広い課題を共有する場となりました。これらの制度変更は、中小企業支援に関わる産業医にとっても重要であり、対応への意識を高めるきっかけとなったように思います。
■ 教育講演:「グローバルな視点も踏まえた化学物質対策の未来」
- 職場の健康と未来を守る産業医と産業衛生技術職のコラボレーション-
(森分 勝人 先生/ ENEOS株式会社 環境安全部安全衛生グループ 産業衛生チームリーダー)
 森分先生からは、大企業における化学物質管理の実践例をご紹介いただきました。ばく露低減の工夫や個人ばく露測定、リスク評価ツールの活用など、海外の視点も交えながら、現場での工夫と連携の重要性について具体的にお話いただきました。
「化学物質で誰も健康を損なわない社会をつくる」ためには、産業医や産業衛生技術職の協力が欠かせません。中小企業においても応用可能な取り組みが多く、今後の実践の参考となる内容でした。
■パネルディスカッション:「 現場で生きる SDS」
              - 化学物質による健康障害事例を専門職の視点で深堀りする- (座長:前野 孝明/第75 回山口県産業衛生学会長、
    上野 晋 先生/産業医科大学 産業生態科学研究所 職業性中毒学研究室 教授
パネリスト:衛生管理者   河野 亮/三井化学株式会社岩国大竹工場
      嘱託産業医   堤 雄介/堤労働衛生コンサルタント事務所
      産業保健看護職 徳永 貴代子/セントラル硝子株式会社宇部工場 管理部
                     管理課 企画総務グループ 係長)
 最後のパネルディスカッションでは、実際の化学物質による健康影響の事例をもとに、SDSの活用や作業環境の確認、保護具の選定などについて多職種の視点から議論が行われました。現場での見落としや対応の難しさを共有し、制度と実態の間にあるギャップをどう埋めていくかを考える場となりました。
 産業医だけでなく、衛生管理者や保健師の役割も再確認され、参
加者からも多くの共感が寄せられました。
 今回の学会では、化学物質管理に苦手意識を持っていた産業医にとっても、SDS を活かした対応 の考え方や、他職種と協力することの意味を学ぶ機会となりました。
 保健師や産業衛生技術職など、多職種が積極的に参加いただけたことは、今後の学会の方向性にもつながる成果でした。産業保健の実践は、個人ではなく「チーム」で行うものであるという実感を、多くの方と共有できたと感じています。
 今後も本学会は、多様な専門職が集まり、互いの視点を尊重しながら学び合える場を目指してまいります。

 準備段階からご助言、ご協力をいただきました山口県産業医会および山口県労働基準協会の皆様、ご登壇いただきました諸先生方をはじめ、運営にご協力いただきました山口県医師会の皆様、また全ての関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。
 
各県報告 島根県報告
島根大学医学部環境保健医学講座
名越  究
 はじめまして。島根大学医学部環境保健医学講座の名越究と申します。
 昨秋から岩本麻実子先生、仲佐菜生子先生と共に中国地方会の島根県代議員を拝命しております。
私は2020年8月に島根大学で勤務しておりますが、それまでは医系技官として25年間、厚生労働省や地方自治体で勤務していました。厚生労働省では主に医療、健康、福祉の部署を廻っており、労働衛生を担当することはありませんでした(労働衛生課には課長を含め4名分の医系技官ポストがあります)。経験不足を補うため、大学に来てすぐに日本産業衛生学会に加入することにしましたが、面目ないことに学会員としての活動は無に等しく、総会参加も産業医研修受講が中心でした。学生に産業保健を教える立場ではあるのですが、なかなか満足のいく教え方が定まらず苦労しておりましたところ、久々の大規模開催となった昨年の広島の総会の活気に圧倒され、改めてこの分野をいかに身近に感じる医師を増やすかが大切なのだと認識しました。労働衛生施策の歴史とか、化学物質の毒性や管理基準とか、メンタルチェックの手順とか、教科書的なことを伝達するもよいのですが(とても大切なことですが)、やはり「仕事と治療の両立支援」や「医療従事者の働き方改革」など、医療現場で働く医師が現在直面しているフレッシュな話題が受け入れやすいのではないかと考えています。今年から始まる「熱中症の管理強化」の大切さも、運動部の学生は特に理解してもらいやすいかもしれません。講義内容の見直しは現在も進行中ですが、いずれ医療の現場で彼らが必ず体験するであろう諸問題に早期に触れさせることを意識しながら設定していきたいと思っています。また、いわゆる公衆衛生の実習のうち、産業保健分野では、株式会社プロテリアル安来工場、中国電力島根原子力発電所、島根産業保健総合支援センターのご協力により、事業者・労働者側に立った労働安全衛生の世界を学生に見せてもらえるようになりました。両事業者の特徴ある取組は、いずれ医療機関で勤務するようになったら見ることができない貴重なものですし、島根県産業保健総合支援センターの仲佐菜生子先生から聞かせていただく中小企業の労働者の実態の話も胸に迫るものがあります。実習の最後にはすべてのグループによる発表会を行いますが、産業保健実習グループの貴重な体験もすべての学生に共有されていきます。島根大学の卒業生がこれからの産業保健にしっかり貢献できるよう、尽力してまいりたいと思います。
 最後に、島根県の産業保健の最近のトピックをご紹介します。
現在、島根県の県内の産業医活動の向上に向けた交流を行うための、産業医ネットワーク会議がこの1月に初めて開催されました。
島根県産業保健総合支援センター所長である森本紀彦島根県医師会長も同席くださり、島根県医師会産業医部会や県内の代表的な事業所などの交流が始まりました。この会議には、島根県ご出身というご縁から森口次郎先生(合同会社森口産業医事務所)のお力添えを頂いております。今後さらに関係者の幅を広げていければと思います。さらに、大企業の本社や大規模事業所が少なく,地域での産業保健体制が確立しているとは言えない山陰地区の産業医を集中的に育成しようとする岡山大学の「地域 de 養成! 産業医スタートアッププロジェクト」が今年度から開始されることになり、基礎研修会を終えたばかりの産業医が株式会社プロテリアル安来工場で専属産業医である岩本麻実子先生の指導の下で実務研修を行うことになりました。このプロジェクトはもともと山陰地区で働いている医師を対象としていることから、今後の山陰の産業保健人材の充実につながっていくことを期待しています。
 中国地方会の皆様には様々な場面でお世話になると思います。以後、どうかよろしくお願いいたします。
各県報告 鳥取県報告


鳥取大学医学部環境予防医学分野
金城  文
 このたび鳥取県代議員を拝命し、はじめてニュースレターを執筆させていただきます。私は現在、県内の製造業および地方自治体において嘱託産業医として活動しております。日々の産業医活動を通じて、労働者の身体活動量の減少や筋力低下が重要な課題であると実感しており、今回はこれらの課題と、職場で実施されている取り組みの一部をご紹介させていただきます。
 厚生労働省の「労働災害発生状況」によれば、令和6年における休業4日以上の死傷災害のうち、「転倒」が最も多く、全体の26.8% にあたる36,378 件が報告されており、前年よりも0.9% 増加しています。
転倒災害の発生率は年齢とともに上昇する傾向にありますが、59歳以下の労働者にも一定数発生しており、筋力やバランス能力の低下が全世代に共通するリスク要因であることがうかがえます。私自身の現場でも、コロナ禍以降、転倒災害の増加が目立つようになり、小さな段差や平坦な場所でも転倒が発生する事例が見られています。
 鳥取県においては、成人の1日あたりの平均歩数が全国平均と比べて少なく、減少傾向も続いています。県民健康栄養調査および国民健康・栄養調査によると、県民の1日平均歩数は、男性で平成22年6,627歩、平成28年6,259歩、令和4年5,926歩、女性ではそれぞれ5,473歩、5,284 歩、5,108歩と推移しており、県が健康づくり文化創造プラン(第三次)で掲げた目標(男性8,000歩以上、女性7,000歩以上)を大きく下回りました。通勤や買い物には車を利用する生活スタイルが定着しており、日常生活における歩行の機会が限られていることも一因と考えられます。職場においても長時間座位で過ごす職種が少なくありません。さらに、高年齢者雇用安定法や地方公務員の定年引き上げにより、60歳以上の労働者が増加しており、労働災害を防止するためにも、身体活動の確保や筋力の維持は、これまで以上に重要な課題となっています。
 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対して「歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(約8,000歩)」、および「筋力トレーニングを週2 〜 3日行うこと」が推奨されています。また、「長時間の座位行動を避けること」が新たに加えられた点も注目されます。これらの推奨は、事業所における取り組みの参考として有用です。
 県内のある製造業の工場では、以前から実施していたグループ対抗の3か月間のウォークラリーや、県主催の体力づくりイベントへの参加促進に加え、令和5 年からは筋力アップへの関心を高めるための職場対抗イベントも開始されました。また、座位時間の長い事業所では、立位での作業が可能なデスクの導入事例を他職場に紹介し、好事例の共有による取り組みの横展開が進められています。こうした職場での取り組みを積み重ねることで、労働者の日常的な身体活動の促進や、筋力維持・向上の習慣化、環境整備へとつながり、結果として筋力低下の予防や労働災害の防止にも寄与するものと考えます。
 なお、同ガイドでは「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」として、対策や事例が紹介されています。今後も皆様の現場での創意工夫や実践例を学ばせていただきながら、鳥取県内でもさらに取り組みを展開していきたいと考えております。
編集後記
日本産業衛生学会中国地方会 会長
神田 秀幸
岡山大学学術研究院医歯薬学域公衆衛生学
 皆様方におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。今年に入っても、テレビ業界のコンプライアンス問題、令和の米騒動、未だ収まらない世界各地で起こる戦争・紛争など落ち着かない社会情勢が続いています。どんな状況であれ、まずもって皆様方それぞれが生命第一、健康第一でありますことを祈念致しております。
 さて、昨年中国地方会が主催した第97回日本産業衛生学会(広島)から、1年以上が経ちました。
大会後の財務処理や企画運営委員会のクロージングまで、真鍋企画運営委員長、塩田事務局長を始め、関係の皆様方に厚く御礼申し上げます。学会運営に当たって、中国地方会メンバー間の顔のみえる関係や地方会の結束は、学会を行った何よりのレガシーになっております。第98回日本産業衛生学会(仙台)でも、会場のあちらこちらで、当地方会メンバーが親しく会話している様子を拝見し、大変嬉しく思った次第です。また、当地方会産業保健看護部会から、産業保健看護職の実態やニーズに関する調査を自主的に地方会独自で取り組む動きがあります。学会を通した絆は今でも続いています。
 本号は、各県から寄せられた内容を盛り込んだ紙面となりました。各県で選出頂いた執筆者がそれぞれの専門分野や関心を持つトピックスを取り上げて頂いた事に加え、鳥取県産業保健総合支援センター相談員 村田勝敬先生による産業保健・環境保健の温故知新に示唆を与える内容でトップページを飾って頂きました。お忙しい中、ご執筆頂きました担当の皆様、有難うございました。村田先生と私は、以前在籍していた東北地方会のご縁から、現在中国地方会に在籍している間柄で依頼させて頂いた次第です。中国地方会に多士済々の会員がいることを見て取れる本号となっています。
 2026年秋には、川崎医科大学伊藤達男先生を企画運営委員長とした全国協議会(倉敷)を当地方会が担当します。倉敷は、およそ100年前に第1 回日本産業衛生学会が開催されたメモリアルな場所で、産業衛生学会にとっては極めて意義深い土地なのです。100年ぶりに原点に戻ってくる産業衛生学会を、中国地方会の会員が一丸となって、広島大会に続き全国の皆様に提供できるよう、良いものにしていきましょう。
 今後とも、中国地方会の活動にご理解とご協力をどうぞ宜しくお願い申し上げます。